映画『グリーンブック』観てきました!
ジャンル:ヒューマンドラマ、コメディ
おすすめ度:★★★★★
こんなときに:温かい気持ちになりたいとき
アメリカニューヨークに住むトニーは2人の子供を持つイタリア系移民の中年男、トニーはナイトクラブ「コパカバーナ」で用心棒として働いています。クラブは改装のためしばし休業に。かつかつな生活をするトニーはその間の仕事を探します。親戚やクラブのつてであてを探す中、ドクターの運転手の仕事が舞い込みます。医者のお抱え運転手かと思って仕事の面接に行くと、「ドクター」ことシャーリーという黒人の音楽家が現れます。当時の風潮から黒人を毛嫌いしていたトニーですが、生活費を稼ぐためにドクター・シャーリーの2ヶ月間の南部巡業ツアーに運転手兼用心棒として雇われることを決めたのでしたー
タイトルのグリーンブックとは、黒人でも宿泊できるホテルを紹介しているガイドブックの名前で、トニーはこの本を片手に各地を巡ります。アメリカにおける人種差別という重たい問題を取り上げつつ、トニーとドクター2人の道中の面白おかしいやりとりが随所に散りばめられていてコメディーとして楽しい作品です。映画館でも度々笑いが出ていましたし、観終わった後も爽やかな温かさが残ります。普段あまり社会問題系の映画は観ないという方でも楽しめると思います。
トニー役はヴィゴ・モーテンセンです。
えっ…
あのロードオブザリングのアラゴルンがビールっ腹!?
いきなりトニーのランニングシャツ姿のポーンと出たお腹に衝撃が走ります…! でも、よく考えたらあの映画は1作目が20年ほど前の公開なので、別におかしくはないのですが…
腕っぷしと口の上手さが自慢の学の無いがさつなトニー役としてはぴったりです。対するドクター・シャーリーは非常に恵まれたピアノの才能と、複数の博士課程を修了した当時の黒人としては奇跡ともいえる経歴を持つ超エリートです。ドクター役の マハーシャラ・アリはいわゆるしゅっとした出で立ちで、いつも身なり正しいドクターとしてトニーと対照的な人柄を好演していました。
ドクターが不当に拘束され、トニーが警官を買収したことで辛くも解放された帰り道にトニーに放った言葉が印象的でした。「どんな気持ちであの城に独りでいると思う?白人にとっては演奏していないときの私はただの黒人、黒人にとっては異端の存在。白人でも黒人でも人間でもない私は一体何者なんだ!」(すみません、台詞はこの通りではないかもしれないです。)白人の富裕層がドクターをパーティーに招待し、喜んで演奏を聴くのは、迫害されている黒人の才能を理解し、寛大にも受け入れている徳の高い私、あるいはそんなもの珍しい演出ができる私、といった、ステータスの誇示の面が大きかっただろうと思います。その意味ではドクターはどんなに才能に溢れていても所詮道化師のような存在です。そして黒人にとっては、白人を凌ぐほどの経歴を持ち、上流階級と交流する雲の上の存在のような人。冒頭ドクターが登場したとき、まるで何かの祭司様のような特異な衣装で玉座のような椅子に座っていましたが、これもドクターが孤高の存在であること、ひいては孤独な存在であることを示唆している場面のような気がしました。
トニーもイタリア系移民として白人ヒエラルキーの中では低い地位にいるのでときに差別を受けますが、同じくイタリア系の親戚たちに囲まれていて決して孤独ではありませんでした。他の人とは違う道を行くことがいかに困難だったかとドクターの苦悩を見て感じました。
最後の場面でドクターがトニーの家をクリスマスプレゼントを持って訪れるところも好きです。
クリスマスイブの夜、ドクターはツアーを終えてトニーを家まで送り届けた後、一度は自宅に戻るのですが、その後出直して手土産を持ってトニーの家を訪れます(ちゃんと着替えて!)。トニーの家族・親戚達はドクターの登場に一瞬戸惑うものの、温かく迎えて一緒にイブの夜を過ごします。
ツアー中、ドクターが兄と疎遠にしていると知ったとき、トニーはドクターにこうアドバイスしています。
「寂しい時は、自分で先手を打たなくちゃ」
最後の場面では、ドクターはトニーのアドバイス通り、自分からトニーに会いに行って一人ぼっちの寂しいクリスマスを回避できたというわけです。確かに寂しいなあと独りで悶々としていても誰もそんなこと知る由もないのですよね~、やっぱり自分から少しでも行動しよう!そしてトニーみたいにもっと楽天的になろう!と心に誓って映画館を出ました。